<講演の要旨>
〇皮膚の働き
・体の中と外とを隔離し保護する宇宙服(ただしところどころ開放されている)
・目や鼻、口、肛門等、あらかじめあいている合法的進入路から入る異物に対しては、準備した
効果的な防護機能(涙や消化液等)で対応。そのため免疫反応は抑制的で融和的。(免疫寛容)
・一方でこれら以外の経路での侵入はすべて害毒異物とみなされて、
速やかに排除すべく免疫応答が起動され記憶される。(感作)
〇合法的進入路と非合法的進入路
・食物のほぼすべては合法的進入路を経由する。
・食べたものに対して過剰なアレルギー反応を起こさないような仕組み。(経口免疫寛容)
・食物アレルギー反応は、ここの働きがうまくいかないと考えられている。
(一部の食物は傾向免疫寛容が成立しないことがある:クラス1食物アレルギー)
・外傷等による非合法的進入路を通るものは、ほとんどが細菌、ウイルス、毒物等である。
・現代社会では「食物由来の成分」などの経口経由でしか取り入れていなった物質が、
衣類や化粧品などに使われ、これが傷口などの非合法的進入路を通る機会が増えている。
〇アレルギーあれこれ
にんじん、魚、はちみつ、卵(再燃)、牛肉、納豆、ラテックス、理美容関連品、鳥関連など
〇成人に多い「経皮感作食物アレルギー」
・香料、化粧品が原因(ニコチール色素)
・職業性(調理や作業で長らく触れる機会が多い食物)
〇意外なアレルギー原因
・鳥関連過敏性肺炎(ペットの鳥、羽毛布団、鳩などの鳥の多い環境)
・過敏性肺炎(カビの飛散胞子、塗装(化学物質)、加湿器の管理不良)
・ラテックス-フルーツ症候群(ゴムの木に含まれるたんぱく質群:類似植物バナナ、アボカド等)
・獣肉アレルギー(珍しい例としてマダニに咬まれたことで発症した例がある)
・豆乳アレルギー(近年の花粉症患者の増加に伴い、症例が増加中)
〇アレルギー対策は健常皮膚の維持
・これまでの例から、経口以外での異物侵入がアレルギー反応をおこしやすい(傷口から侵入)
・皮膚を健常に保ち、傷口には適切な処置をして異物侵入を防ぐことで
アレルギー反応のほとんどを回避できる。